石が好きな人なら見たことがあるのではないでしょうか?筒状の細長い天然石に様々な模様が描かれているものです。
アクセサリーにして使ったり人気があるものですが、高額品からかなり安いものまでピンキリで、一体どれを選べば・・・と迷う人も多いのが天珠です。
今回そんな天珠についてパワーストーンショップを運営している私が記事にまとめています。
天珠
このような筒状の形をした細長い天然石を見たことはないでしょうか?

これが天珠です。
様々な自称天珠有識者が独自の見解を示していますが、大まかな天珠の定義としては「樽型の天然石」です。
その横幅は短いものもあれば、横長なものもあり、明確にサイズなどは決まっていません。
古いものでは丸い形もあります。
ここに模様が描かれているものもあります。

もともとはメノウ、カーネリアン、カルセドニーなどに模様が描かれているものでしたが、今では模様の無いものや、彫りの天珠も現代天珠としてあります。
チベットで生まれた
もともとはチベットの方々がお守りとして身に着けていたものです。
その現地で古くからある天珠を「老天珠」と呼びます。
それを再現して作られているのが市場で流通している「現代天珠」です。
台湾では天珠の研究が早くから行われていて、本なども出ているようですが、その基準だと古い発掘品などの昔作られた天珠を「古天珠」「老天珠」「至純天珠」と呼び、現代作られたものを「現代天珠」「飾品天珠」と呼ばれているとあります。
かなり遡ると、粉末にして薬として飲まれていたこともあります。
「正式にはシービーズと呼ぶ」と書かれているものも多いですが、現地では「ズィー」と呼ばれていようです。
穴が開いているのでビーズ、ズィーのビーズで「ズィービーズ」となる。
そして貴石を「玉」と呼ぶことから「珠」と訳し、チベットの人たちがズィーを”天からの授かりもの”と考えていることから「天」の文字が入り、「天珠」と呼ばれるようになったとされます。
茶色い石に縦長の形をした天珠は蝶や繭の形ににており、古代チベットの伝説では天珠を生きた虫そのもの、または虫が化石になったものであると考えられていました。
ラマ僧たちが着衣の長い袖を振って虫を地上に落とし、それが固まってズィーになったという伝説や、山でズィーを見つけたが、村人を集めて駆け付けた際には逃げて消え去っていた、などの話がある。
そして地上に疫病が蔓延し、多くの民が苦しんでいるのを見た仏が、上空から疫病退散を願って蓮花を放ったところ、それが地上に達したときにズィー(天珠)に変化した、という美しい伝説もある。
これだけ見てもチベットの人々にとっていかに天珠が特別な存在かが分かりますね。
そして疫病や邪悪なものを祓うもの、防御するものとして信仰されています。
現代でも水晶の100倍のパワーがある、なんて言われていたりもします。
飛行機事故から生還した!?
天珠ブームを起こしたとされるのが1994年の飛行機事故です。
名古屋空港に無事着陸するはずだった航空機は着陸誘導路に墜落。
乗務員15名と、乗客249名の方々が亡くなるという何とも痛ましい事故でした。
7名の乗客は助かり、インタビューがニュースでも大々的に取り上げられていましたが、その中のお一人が「自分は天珠を身に着けていたので助かった」と答えたそうです。
不可避でもある航空機事故から助かる幸運の石として認知されることで、天珠のブームが始まったとされています。
様々な模様がある
天珠に描かれる模様は様々です。
特に特徴的なものは〇を描き、目の形に模したものです。
「~眼天珠」と呼ばれるもので、〇の数、目の数が名前になります。



こちらは二眼天珠ですが、表と裏に眼の模様がふたつ描かれているので「二眼天珠」と呼ばれます。


こちらは5個と6個あわせて11個描かれているので「十一眼天珠」と呼ばれます。
このような○○天珠というのは、天珠の模様でもよく見かけるものです。
もちろん他にも

蓮師法帽や

菩提天珠など様々あります。
もっと沢山ありますよ。
そしてそれぞれの柄によって意味合いが異なり、お守りとしての効果などが変わるとされています。
この模様の多様さも天珠の魅力のひとつであり、コレクターが多い理由ではないでしょうか。
偽物ってある?
天珠に必ずと言っていいほど付き纏うのが偽物問題ですが、「天珠って何ですか?」と聞くと明確に定義づけ出来る方はあまりいません。
明確な定義づけが出来るならその定義に当てはまらなければ偽物、となりますが、無い以上はそもそも「偽物」という概念もいらないのではないでしょうか。
大まか現在の天珠の定義は冒頭でお話した通り「樽型の天然石」です。
ただこれも丸い楕円形のものを古い写真であったりするので、必ずしも当てはまるものではありません。
天珠はメノウやカーネリアン、カルセドニーなどが使われているものが多く、模様は炭酸石灰を焼き付けて作られているものがあります。
しかし、その製法では作れない、現代では再現できない古い天珠もあります。
定義付けするとしたら「かつてチベットで使われていたお守りの石」、「そしてそれを再現した石」でしょうか。
もともとチベットで作られてたものを基に作られている天珠ですが、「この製法で作ったうちの天珠のみが本物」とか「元々の職人さんに頼んでいるこの天珠だけが本物」とか、売りたいがために他を落とす意味の分からない定義づけをする人を見たことがありますが、所詮は昔のチベット天珠の「再現」にしか過ぎません。
「再現」に偽物も何もありません。
全てが「再現」もしくは、チベットの老天珠から派生したものに過ぎません。
なのでもともとのチベットの古い天珠にはない模様のものも今ではあったりします。
そういったものを大げさに「偽物」と言ったり、天珠は焼き付けて模様を付けたりするのですが、その焼きが少し甘いものをこれ見よがしに「ひどい、これはあり得ない」などとコケ落としているのも見たことがあります。
売りたい、自分のところだけが凄いんだという虚栄心から、独自の本物の定義を付けて高値で販売している人たちですね。
これは天珠に憑りつかれていると言ってもいい状態です。
天珠は他の石に比べても高値で売っても何故か買う人が多い石でもあります。
「えっ!」と驚くような値段で売られているものも多くあります。
人気もあるのでいい商売でもあります。
正直こういった専門店や専門家を語る人から高値で買って騙されている人も多く見ます。
個人的には2ケタするものはやめておいた方がいいと思っています(三桁は論外)。
どんなに色々セールストークを付けようと所詮は今販売されている天珠は老天珠の再現なので・・・。
買う方も信じ込んで法外な価格でコレクションしたり騙されているように見える方も多くいます。
楽しんで買ったり、集めたりしている方は除きますが、ものすごい高額品を購入したりしているのを見ると執念を感じますし、買う側も何かに憑りつかれているのか・・・と思ってしまうこともあります。
自分独自の定義付けをして他を下げるような発言をしている人を見たら「自称専門家」と思った方がよいでしょう。
もしそれでも気になってしまうなら「じゃあ本物の天珠ってあなたにとっては何ですか?」と聞いた方がよいかもしれません。
それを長々とけむに巻く説明ではなく、分かりやすく端的に答えてくれないのなら、高額品の購入は考えた方がよいかもしれません。
そもそも石ではなくプラスチックなど、そういった表記と違うものは明らかに偽物と言えるかもしれません。
しかしそれ以外の部分であれば中々検証は難しいです。
「本物の天珠を作る本物の職人さんに作って貰ってる」など定義の良く分からないもの、検証の仕様がないものなどはもはや誰も確かめようもありません。
昔ながらの天珠は買えない
「本物の天珠」というものがもし仮に存在するというのであれば、それは「老天珠」になると思います。
再三出ているように天珠はチベットで身に付けられ、作られていたものです。
それをもとに現代天珠を作っているので「どうしても「本物」「偽物」の定義が付けたいんだ!!」という場合には老天珠を本物とすればよいでしょう。
しかしじゃあこの老天珠をどうやって手に入れるのか、というと、これがそうそう買えるものではありません。
古くからの老天珠は、家族間で子供から孫へ、そしてまたその子供へと代々大切に受け継がれているようなんですね。
そのくらい天珠が特別なものなのでしょう。
稀に一般市場に出ることが仮にあってもオークションなどでしょうし、買えるレベルの値段ではないようです。
家宝として大切にしている天珠を泣く泣く売りに出すことも稀にあるようです。
そして他に出る理由があるとすると「盗掘品」なども可能性として考えられるようです。
・・・・・・・・・・・・そんなもの欲しいですか???
何かバチあたりっぽくて私ならタダでもいりません。
そんなものに二桁や三桁出すなんて、馬鹿げてませんか?
という訳で老天珠は買えません。
あったとしても数百万、ときには一千万近くすることもあるそうです。
アメリカのコレクターなどが持っていることもあり、それを辿る人もいるようです。
ただ見極める目も知識も無い状態では、騙される確率の方が高いです。
そして別に追い求めるものでもありません。
そこまでして欲しいですかね。
「本物の天珠」はチベットの方々が大切に家宝として身に着けて継承していけばよいのです。
じゃあ現代天珠は偽物なのか?
では今販売されている現代天珠は偽物なのかというと違います。
先ほどは「天珠に偽物や本物というカテゴライズをどうしてもしたいなら」というお話です。
現代天珠も天珠です。
じゃあ例えば伊万里焼ってありますよね?
古伊万里という骨董品として価値があるとされる古い伊万里焼があるかと思います。
テレビのなんでも鑑定団とかでも出てきますね。
しかし伊万里焼というのは現代でも作られている訳です。
じゃあその伊万里焼が偽物なのかというと、違いますよね?
あくまで「現代の伊万里焼」であって伊万里焼なのです。
それを勝手に「これは伊万里焼ではない」とか誰かが知ったかぶって言ってしまうとそれはおかしなことになりますね。
ただ最近作られた伊万里焼を「古伊万里」として高額で販売した場合それは偽物でしょう。
年代を詐称してぼったくっている訳ですから。
それと同じことが天珠にも言えるかなと思います。
「老天珠」古いチベットの天珠として高額で販売しているのに、最近作られた現代天珠だった場合、それは偽物といわれるでしょう。
ただ現代天珠=偽物ではないのです。
また、伊万里焼の場合は製法や柄も含め定義付けがもっとはっきりあるかもしれませんが、天珠の場合は曖昧です。
詳しい製法も案外情報が少ないですし、昔ながらの柄とかも探せば出ますが、全てが完璧に把握されている訳ではありません。
これから新たに発見される可能性もあります。
今作られている現代天珠も素晴らしい技術ですが、一部の古い天珠は未だに製法が分かっておらず、再現が出来ないものもあるようです。
伝承自体もされていないようなので、辿りようもありません。
現代天珠として適正な価格で販売されている場合、そもそも偽物とか偽物じゃないとかいう話をすること自体がおかしな話ですよね。
現在も伊万里焼を作っているお店に行って「これは本来の伊万里焼じゃない」とか言っていたらちょっと変な人だと思いませんか?
そもそも「古伊万里」と謳っているわけではないですから。
天珠もこの辺りの事情を良く分かっていない人が「あれは偽物」「これは偽物」「これ以外は偽物」と騒いでいるのかなという印象です。
そして恐怖を植え付けて、悪く言えば自分のものだけを本物だと信じさせようと洗脳しているようにも見えます。
「至純天珠」も古い文献では、発掘品などの昔からある天珠を指す、とされていましたが、今ネットなどで見ると品質のいい現代天珠に「至純天珠」と書かれているものが多いです。
まあそれも今はそういう認識に変わったのだろうからそれはそれで問題ありません。
ただ「こういうのを至純天珠って言うんだよね~、知らない人いるけど。そういう販売者は偽物だね。」と現代天珠を映しながら言っていた動画を見たことがありますが、至純天珠の基準もいつの間にか変わっているのも知らず、他の販売者を小ばかにされていて、そういうのはどうかと思います。
詳しいとか詳しくないとかではなく、こういう周りを小ばかにする発言や自分だけが詳しい、という発言をする販売者には、天珠に限らず気を付けた方がいいと思います。
いい加減な販売者や店舗があるのも事実ですが、他の真面目に商売している方にリスペクトを持てない人はダメです。
こういう人ほどよくよく話を聞くと詳しくない、間違っている、結局何を言っているか分からないことが多いです。
そしてこういう情報を聞いたお客様がこのことを知っているか試すような発言をしてきたり、不安になって様々な質問をしてくることがあります。
正直間違っている情報ばかりでかなり困ります。
気楽に持ってほしい
他の石同様、あまり頭でっかちにならず、信頼出来ると感じるお店で、自分の気に入ったものをお守りとして持ってほしいなと思います。
買った後に「これは偽物なのか?本物なのか?」と疑いながら持ち続けるのは精神衛生上良くないように思います。
他の石でもそういう方を見かけますが、今あるものを大事に思えないのであれば最初から購入せず、購入したのであれば大事にした方がいいです。
最近では漂白剤などに浸けてまで真偽を確かめようと謳う動画まで見ますし、「やってみます」という視聴者のコメントを見ましたが、そこまで疑うのに買うのはなぜでしょう。
石も傷みます。
天珠は難しいですが、他の石はそこまで気にするなら買わないか、疑ってもどうしても買いたいなら鑑別書付きのものを買えばいいと思います。
天珠もいいな、と感じられたら買う、不安に感じたら買わない、で問題ないです。
気に入って購入したのなら、それを信頼して大切にする方がいいですよね。
それと共に自分が無理なく買える金額のものがいいのではないでしょうか。
確かに中には原価の時点から多少高いものもありますし、小ロットで個人が注文して作ってもらうと高くなるので、必ずしも高いものが良くないとは言いませんが、もし「これはいいものらしい」と思い込んで高額品を買うのであればそれはあまりおススメ出来ません。
もちろん個人の自由ではありますが、数千円~高くても3万円くらいの範囲で留めておいた方が個人的には賢明だと思います。
もともと何度も書いている通り、老天珠は買えないのですから(買えたとしても本物か分からないし出どころが分からないもの)。
中には「安いものは偽物」という人もいますが、ここまで読んだ方なら分かりますよね。
偽物という定義自体も人によって異なりますし、安く買ったものを高く売ることも出来ます。
あまり欲深くならず、手に入ったものや出会ったものとのご縁に感謝して下さい。
天珠は多様であっていい
自称天珠専門家や、天珠に詳しいんだぞ、という人が様々な独自理論を展開しているのを見ると「息苦しさ」を感じます(現地に赴いて調査したり、文献などを書いていたりするきちんとした研究家の方は除きます)。
もともとの老天珠は古いアンティークであるという条件がありますが、現代天珠など本来確固とした型の存在しないものを、なぜそんなに頑なに型にはめようとするのでしょうか?
自分は詳しい、と誇示したいのでしょうか。
好きだから故に、なのかもしれませんが、現代天珠は老天珠からインスパイアされたものなのですから、もっと多様な価値観と共に広まっていっていいと思います。
天珠は多様な形で存在していいし、価値観も多様であっていいと思います。
石と謳っているのにプラスチックだったり、かなり安い価格のものを高額で販売しているものもあると思われますので、その点だけ購入される方はお気を付けください。
それ以外は気に入られたものを買われればよろしいです。
まとめ
もっと気軽に身に付けましょう、というのが結論です。
全然詳しくなくて何を買ったらいいのか分からないという方は、自分がいいなと感じたショップで、自分の気に入った天珠を買いましょう。
何だか不安、と感じる方は無理に購入せず、買いたい、と前向きになったときにお迎えしましょう。
調べても調べても、結局まだ再現できない製法もあるくらいなので分からないことも多いですし、色々な人の言っていることを聞いても情報が様々で沼にはまると思います。
これは天珠に限らない話ですが、もし調べる場合は「本」がおススメです。
これもブログなのでなんですが、ネット上の情報は誰でも発信出来るので、混乱を招きやすいです。
欲深くなりすぎると、「もっと効果があるのはどれだ」「本物が欲しい」「もっといいものが欲しい」と色々な情報を求めすぎたり、執着が強くなりすぎます。
多分こういう状態だと憑りつかれやすいと思います。
ぜひ肩の力を抜いて石と向き合ってみて下さい。
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